成功する為に大切な事 その2

歯医者はストレスがいっぱい

以前医学部の学生は優秀な人間程、外科のように人命にかかわる医局に進むことを望んだらしいです。
学業の優秀な人から外科、内科と続き、眼科や耳鼻科へ進むのは親が開業している場合以外では、成績的に下の人間が多かったのが、今では成績の優秀な人ほど、人命にかかわらない眼科や耳鼻科を選択していく傾向があると聞きました。

外科医というのは、オペがあるとなると休みだろうと緊急に呼び出されたり、手術では最善を尽くしても結果的に人命が助からなければ、医療ミスではないかと疑われる因果な職業なのです。
外科に限らず医療全般において結果で判断されてしまう職種なのです。

多くの職業が結果で判断されることは同じことかもしれませんが、医療というのは命や人体にかかわっていることなので、結果が好ましくないからといって簡単にやり直すことはできないのです。
一度死んだ人の手術をやり直す訳にいきませんし、一度傷つけた人の体を元に戻すことは不可能なのです。

歯科においても、一度削った歯を元に戻すことはできませんし、死んだ神経を生き返らせることもできません。
人命や人体に手を加えることが、治療結果のみで判断されるということは、不可逆的な行為をしているだけに、多大なストレスと背中合わせに仕事をしているということなのです。

商品を返したり、お金を返せば済むというものでもないのです。
逆に返金するということは誠意として受け取られるのでなく自分の非を認めたことと同じで医療ミスとして判断され、別の問題に進展してしまう可能性があるのです。

医者はき然としていてかっこいいというイメージがありますが、信頼してもらう為にはき然とせざるを得ないという職業で、その裏ではいつも治療結果にビクビクしながら多大なストレスをためこんでいる職業人なのです。

そういう意味で、医院経営におけるお金の動きに一喜一憂しないで済むように、経営的なセンスやノウハウも身につけていかなければ、医療施術に専念できる環境を作ることが難しくなってしまうのです。
きちんとした診療をしていくためにも「お金儲けは悪い事」という意識を捨てて、お金に困らない経営体制を作っていく事が大切なのです。

意味と価値

人間は楽をしたい生き物だと思っています。
しかし、成長したい、という気持ちがあるのも事実です。
このギャップを埋めるために大切なのが「意味と価値」なのです。
ダイエット、禁煙、英会話、スポーツジムなど多くの人が、すぐに挫折して「自分は意志が弱いな」と自己嫌悪になりがちです。

しかし、人間はもともと意志が弱いものなのです。
物ごとが続けられるか挫折するかは、意志の問題ではなく、意味と価値の問題なのです。
何の為にダイエットするのか、禁煙する事に何の意味があるのか、英会話が出来るようになることで自分の人生がどう変わるのか………

安易な気持ちで物事をスタートすると、そのうちに楽をしたいという人間の本能が強くなり、「めんどくさい」「この行為に意味があるのか」という行動しなくてもいい、言い訳を考え始めるのです。
人間は、しない理由、楽をする理由を考える天才です。
本能的には、現状を変えたくはないのです。

それに反して行動していくためには、あらかじめ行動していく「意味と価値」を自分に納得させておく必要があるのです。
安易なスタートは長く続きません。自分の中で、何の為にするのかという意味をはっきりさせる事が、継続していくためには大切なのです。

作業と仕事の違い

多くの人は、仕事と作業を一緒に考えています。
人が成長する為には、作業ではなく仕事をしていかなくてはいけません。
そんな事に気付かせてくれた出来事がありました。

それは、あるタクシーの運転手の方との出会いでした。
その人は、タクシー歴32年のベテランで65歳の方でした。
会話や言動にとても思いやりを感じられ、イキイキと仕事をしているという表現がぴったりの方でした。
32年も同じ仕事をしていて、65歳にもなってなぜこんなにイキイキと仕事に打ち込めるのかがとても不思議でした。

タクシーの運転手さんは、お客の取り合いで競争も大変でしょうし、理不尽な客も多いだろうし、それなのに、どうしてこんなに前向きに仕事に打ち込めるのかを、聞きたくてしょうがありませんでしたが、同乗していた知人もいたので、お聞きするきっかけをなかなかつかめませんでした。

目的地も近くなってきて、このまま帰ったら後悔すると思い、運転手さんに思い切って聞きました。
それはまるで好きな人に思い切って告白するぐらいの勢いでした。
「運転手さんは30年以上も同じ仕事をしていて、嫌なお客も多いでしょうに、なぜそんなにイキイキと仕事をできるのですか?」と私が聞くと

「私は毎日今日が運転手の初日という気持ちで仕事をしているのでマンネリにはならないのです。
初心忘るべからず、ですかな、 わっはっは………
それに、いろんな人がいますから、いちいちお客さんに腹を立てたりする事はないですよ。」
と言われました。

タクシーを降りてからも、数日間はこの運転手さんの事を考えると、すがすがしい気持ちになりました。
タクシーの運転手さんには、お客を不快な気分にさせる人、可もなく不可もなくと言う人、お客を感動させる人の3種類があると思います。
これは、タクシーの運転手さんに限らず、どの仕事においてもこの3種類に分類できると思います。

歯科医院も同じです。
帰る時に嫌な気分にする医院、可もなし不可もなしの医院、帰る時に元気をもらえる医院。
今まで私は、歯科医院は、歯を治療する場所だと思っていましたが、今回の運転手さんと接して患者様に元気を与える場所でもあるのだと思いました。

「こんなことまで気を使ってもらってありがたい……」
「この子は若いのに、こんなに頑張っているのだから、私も今日から頑張ろう……」
「ここまで丁寧に診療してもらえてうれしい……」

感動とは「自分だったらここまではできないな」という事を目にした時にわきでてくるんですね。
今回の出会いで、本当の仕事というのは、自分が成長するだけでなく、他人にも勇気と元気を与えるものではないかと気付きました。

相手を感動させない仕事は、本来、仕事ではなく作業なのではないだろうか?
毎日、本来の意味する仕事をする事は難しいかもしれないが、日々、作業ではなく仕事をする心がけが自分を成長させてくれるのではないかと気付きました。
何事も気持ちが一番大切なのです。
成長したい、尊敬されたい、人を感動させたい、そんな熱い気持ちの人が成功するのです。

ある開業医の悩み

下記のようなメールをいただきました。

青山健一先生
本年もよろしくお願いいたします。

毎回メルマガをよんで、勇気づけられています。
ある先輩が以下のことで、悩んでいます。

セミナーでインプラントの講師になっている先生が実は同級生だった。
その同級生のやっているセミナーに参加する自分の惨めさ。
また、シークエンシャル咬合やキャディアックスを使用して顎機能を調べ、リファレンス咬合器やSAM咬合器で自費をやっている同級生などもいます。

ましてや、同級生がここまで出世している姿をみると田舎で保険中心で、まして平均値咬合器レベルでやっている同級生は惨めな思いです。
いったい、いままで何をやってきたのだろうか・・・

いまさら東京の有名歯科医に就職も不可能ですし、こういうときには田舎歯科医師は、どのように考え、今後の行動をしたらよろしいのでしょうか?
今後いつか、この多くの歯科医が思っているこのテーマを、メルマガで取り上げていただけたら幸いです。

上記のメールを読んで、私自身も経験あるので、この先生の気持ちはとても良く分かりますし、私なりのコメントをさせていただきます。

「同級生のやっているセミナーに参加する自分の惨めさ。」
「同級生がここまで出世している姿をみると、田舎で、保険中心で、まして平均値咬合器レベルでやっている同級生は惨めな思いです。」
「いったい、いままで何をやってきたのだろうか・・・
いまさら東京の有名歯科医に就職も不可能ですし」

私自身、セミナーを開催していて、私の同級生は殆どセミナーに参加されません。
同級生などに会うと必ず「セミナーをしてすごいですね」と言われます。
何でセミナーをしていると「すごい」と言われ、それを聞く方がみじめに感じるのだろうかと考えてしまいました。

私自身、開業して赤字の5年間は、自分がみじめなので同級生とは会いませんでした。
自分は赤字なのに友人はベンツに持ち家……など
このままでは結婚も無理かなと悲観的になりました。
本当に死にたいぐらいみじめでした。

そうこうしていて、開業4年目に1か月入院する事になりました。
仕事の状況は何も変わっていないどころか、1ヶ月医院を閉めたので、以前にもまして暇な医院でした。
無事退院できた時には幸せを感じました。
成功している同級生と比べると自分はみじめに感じ、入院していた自分と比べると幸せを感じる自分がいます。

同じ状況においても、みじめか幸せかは自分の考え方次第なのです。
「同級生がしているセミナーに出る」のはみじめでしょうか?
同級生だからエコひいきしてくれるからラッキーとは考えれませんか?
「田舎で保険中心で、まして平均値咬合器レベルでやっている治療」はみじめでしょうか?

平均値咬合器レベルで患者様を満足させている先生の方がすごいとも考えれませんか?
自費治療が偉くて保険治療がレベルが低いわけではありません。
どちらにやりがいや生きがいを感じるかだと思います。

ベンツに乗っている人が偉いわけではありません。
カローラに乗っていて満足する人と、ベンツでも不満を言っている人とではどちらの方が幸せでしょうか?
先日のブログでそういう事を書きましたので一読してみてください。
https://www.youkyousei.com/category/incho-blog/

「いったい、いままで何をやってきたのだろうか・・・
いまさら東京の有名歯科医に就職も不可能ですし」
本当に今を変えたいのであれば、自分でできる事はあると思います。

人間はみんな、できない理由を考える天才です。
やる気が本気になるまでできない理由が勝りますが、本気になると、小さな出来る事を見つけて行動するようになります。
そのきっかけが欲しい場合は下記の2冊の本などの伝記を参考にしてみてください。
「オール1の落ちこぼれ教師になる」(角川文庫)「一歩を超える勇気」(サンマーク出版)

今回偉そうなコメントを並べましたが、私自身、自分よりも売り上げがあったり、分院をたくさん持っていたり、本をたくさん書いている人を見ると……
確かに嫉妬心はあります。
何かと比較をする事で自分をみじめに感じる事はよくあります。

しかし、誰かとの比較と幸せである事とは何の関係もないのです。
私の今の最大の関心事は「幸せになる」ことです。
幸せは他人との比較からは決して生まれません。
売り上げが多い歯医者や分院を持っている歯医者などはそれなりに苦労も多いのです。

私自身、うまくいっていた広島の分院を売却しましたし、セミナー講師も何度もやめようと考えました、売り上げが上がるに従って、楽をする事ばかり考えドンドン不幸になった時期もありました。
周りからうらやましいと思われている事の裏側では、いろいろ大変な事があるものです。
それが見える人と見えない人との違いは、「何の為にこれをするのか」を考える習慣があるかないかです。

「何でセミナー講師になりたいのですか?うらやましいと思うのですか?」
お金ですか?……そんなに儲かりませんよ。
名誉ですか?……自分が名誉だと思っているだけで、下手をするとそのために鼻もちならない人間になってしまいますよ

セミナー講師をしている先生の中には、絶対にこの人には治療して欲しくないと思うような先生が多くありませんか?
名誉職だと思っているのでしたら、その反動を自制しないと必ず不幸につながりますよ。
私がセミナー講師を何度もやめようと思いましたが続けられる理由は、参加した先生からの感謝の感想文です。
これがあるから辞められないのです。

人の幸せは、他人から認めてもらい評価してもらう事です。
それはスタッフや患者様からも同じことです。
今の私の関心ごとの1つはボランティアに生きがいを感じる方のパラダイムシフトを起こしたきっかけを知ることです。

今日のテーマで話し始めますと30分ぐらいすぐに経ってしまいますので、興味のある方は私のブルグの「幸せってなぁに」https://www.youkyousei.com/category/incho-blog/を読んでみてください。

開業に向けてのアドバイス

青山は歯科医師向けのセミナーを定期的に開催していますが、開業がゴールというイメージでは今後は生き残るのは難しいでしょう。
自分は何のために開業するのか、目指すゴールはどこにあるのか、どんな歯科医師になりたいのか、を明確にして開業すれば、しばらくの間軌道に乗らなくても頑張れます。

開業する目的は人によって異なりますが、私は患者様に喜ばれる歯科医師になりたいと思いました。
開業当初は苦労しましたが、今では患者様から「スタッフのレベルが高い」と評価されるようになって、開業して本当によかったと思えるようになりました。
これから開業される先生も「開業してよかった」と思えるようになっていただきたいと願っています。
その為には、歯科技術以上に人間としての器が大切になってくると思います。

『南青山発「落ちこぼれ歯医者の逆襲」』(デンタルダイヤモンド)に書いたような悲惨な歯科医人生を歩まないように勤務医時代からきちんと頑張っていくことが大切な時代になってきています。

プライドと素直さ

人間は「小さな成功体験」を蓄積していきながら、自信をつけていきます。
「自信を持つとは自分を信じること」ですので、幸せに生きていくためには自信を持つ事は大切なことです。
しかし、何でも表と裏があるように、自信を持つ事への悪影響もあります。
それは自信とともにプライドが高くなってしまう事です。

プライドが高くなるという事は、素直さが無くなってくるといいう事です。
「自分はこういう成功体験があるからすごいんだ」と思う事で、他人の意見に対して素直に耳を傾けられなくなってくるのです。

他人のアドバイスを素直に聞けなくなってくると、その人の伸びしろも減ってきます。
成功体験はとても大切ですが、成功体験がさらなる成長を阻害する因子にもなってくるのです。
学業が優秀だった人は、それだけでプライドが高くなってきがちです。
学歴がある事と仕事が出来る事には何の関連もありません。

英語が出来るから数学が出来るわけではありません。
英語ができても数学は同じように学ばなければいけないのに、俺は英語が出来るのだから数学は人から学ばなくても自分でやる、と意固地になっても何の成長もありません。

学歴等は卒業と同時に気持ち的には投げ捨てて、仕事においても新たに成功体験を積んでいく事がその人の成長するには大切な事なのです。
過去にしがみついていては、気持ちが守りに入って未来は開けません。

「貴方にとってのゴールは今ですか?」
今がゴールであるのならば、過去の成功体験を誇示していくしかありません。
しかし、自分にとってのゴールが、数年後、数十年後であるのなら、今までの小さな成功体験をあえて捨てることで、素直に多くの事を吸収できるのです。

また、目の前の出来事に一喜一憂する生き方が、プライドを増長してしまいます。
そうならない為には、自分の夢を再確認して、自分にとっての成功とは成長とは何なのかを強く意識していくことで、自信を持ちながらでも素直であり続ける事が出来るのだと思います。

今の結果に一喜一憂するのではなく、自分の夢や未来に向かって、今どうする事がベストかを冷静に見つめる事で、一喜一憂しない地道な努力が出来るのではないでしょうか?

「自分のゴールは今ではない!」
短いスパンで考えるから一喜一憂するのであって、長いスパンで物事を見れる人間が、コンスタントな結果を継続できるのだと思います。

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